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うち靡く春の柳と我がやどの
梅の花とをいかにか分かむ

歌の意味
なびいている春の柳と、わが家の庭の梅の花とを、どのように優劣を分けたらよいだろうか。
鑑賞
巻第五 雑歌 826

詞書は前の歌に続き「梅花の歌三十二首 并せて序」
 春風になびく柳と庭の梅の花と、どちらがすぐれているか分けようもないと詠む一首である。梅と柳を並べた前後の歌を受けて、いずれも美しい春の景物だと両方をたたえている。
 天平二年正月十三日、大宰帥大伴旅人の邸宅に大宰府の官人や九州諸国の国司らが集い、庭の梅を題に詠み合った「梅花の宴」の歌三十二首の一首である。漢文の序は、初春の令月に気は良く風は和らぎ、梅は鏡の前の白粉のように白く開き、蘭は身に帯びた香のように薫ると記し、令和の元号の典拠となったことでも知られる。序は、中国の詩文に落梅の篇があるように、園の梅を題に短歌を詠もうと結ばれている。歌の末尾に「大典史氏大原」とある。大典は大宰府の主典のうち上位の官である。
 作者の史氏大原は、大宰府の大典の任にあった官人である。氏の名は史部系の氏族とみられるが、明らかではない。

 初句「うち靡く」は、なびくさまをいい、「春」にかかる枕詞としても用いられる。ここでは柳がなびく実景を兼ねる。
 二句「春の柳と」は、春の景物としての柳を挙げる。
 三句「我がやどの」は、宴の開かれた家の庭をいう。
 四句「梅の花とを」は、柳と梅とを並べて比べる形をとる。
 結句「いかにか分かむ」の「か」は疑問の係助詞で、「む」で結ぶ係り結びである。どう区別しようか、区別などできないと、両者をたたえて結ぶ。

うちなびく:なびく。「春」にかかる枕詞としても用いる
わく:区別する、優劣をつける
作者
史氏大原
出典
万葉集
前の歌
梅の花咲きたる園の青柳を 蘰にしつつ遊び暮らさな
次の歌
春されば木末隠りて鴬ぞ 鳴きて去ぬなる梅が下枝に