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鴬の音聞くなへに梅の花
我家の園に咲きて散る見ゆ

歌の意味
鶯の声を聞くのにつれて、梅の花がわが家の庭に咲いては散るのが見える。
鑑賞
巻第五 雑歌 841

詞書は前の歌に続き「梅花の歌三十二首 并せて序」
 鶯の声を聞くにつれて、庭の梅が咲いては散るのが見えると詠む一首である。聴覚の鶯と視覚の梅を並べ、声とともに移ろう花の姿を描いている。
 天平二年正月十三日、大宰帥大伴旅人の邸宅に大宰府の官人や九州諸国の国司らが集い、庭の梅を題に詠み合った「梅花の宴」の歌三十二首の一首である。漢文の序は、初春の令月に気は良く風は和らぎ、梅は鏡の前の白粉のように白く開き、蘭は身に帯びた香のように薫ると記し、令和の元号の典拠となったことでも知られる。序は、中国の詩文に落梅の篇があるように、園の梅を題に短歌を詠もうと結ばれている。歌の末尾に「対馬目高氏老」とある。
 作者の高氏老は、この時対馬国の目の任にあった官人である。

 初句「鴬の」は、春を告げる鳥をまず示す。
 二句「音聞くなへに」の「なへに」は、…するにつれて、…と同時に、の意で、二つの事柄が並行して進むことを表す。
 三句「梅の花」は、鶯の声と並ぶ視覚の景物として置かれる。
 四句「我家の園に」の「我家」は「わぎへ」と読み、「わがいへ」のつまった形である。
 結句「咲きて散る見ゆ」は、咲いては散るさまが見える、の意で、時の移ろいを目に見えるものとして捉えて結ぶ。

わぎへ:わが家
作者
高氏老
出典
万葉集
前の歌
春柳かづらに折りし梅の花 誰れか浮かべし酒坏の上に
次の歌
我がやどの梅の下枝に遊びつつ 鴬鳴くも散らまく惜しみ