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今朝の朝明雁が音寒く聞きしなへ
野辺の浅茅ぞ色づきにける

歌の意味
今朝の明け方に雁の声を寒々と聞いたちょうどその時に、野辺の浅茅が色づいたことだ。
鑑賞
巻第八 秋雑歌 1540

詞書は前の歌に続き「天皇の御製歌二首」
 今朝の明け方に雁の声を寒々と聞いたちょうどその時、野辺の浅茅も色づいたと詠む歌である。耳に届く雁の声の寒さと、目に映る浅茅の色づきとが同時にとらえられ、秋の深まりが鮮やかに表されている。
 題詞の「天皇」は聖武天皇とされる。作者の聖武天皇は文武天皇の皇子で、奈良時代の天皇である。仏教を厚く信仰し、東大寺の大仏を造立した。

 初句「今朝の朝明」は字余りで、今朝の明け方の意である。本巻の第千五百十三首の穂積皇子の歌も同じ初句で雁の声を詠み、春日山の色づきを推し量っている。
 二句「雁が音寒く」は、雁の声が寒々と聞こえるの意で、声に寒さを感じ取っている。
 三句「聞きしなへ」の「なへ」は、〜するちょうどその時にの意である。
 四句「野辺の浅茅ぞ」は、係助詞「ぞ」で、野辺の浅茅こそがと強める。
 結句「色づきにける」は、四句の「ぞ」を受けて詠嘆の「けり」の連体形「ける」で結ぶ係り結びである。本巻の第千五百七十八首の阿倍虫麻呂の歌も「雁が音寒みかもこの野の浅茅色づきにける」と、ほぼ同じ趣向と結句で詠まれている。

あさぢ:丈の低いちがや
あさけ:夜明け、明け方
作者
聖武天皇
出典
万葉集
前の歌
秋の田の穂田を雁がね暗けくに 夜のほどろにも鳴き渡るかも
次の歌
我が岡にさを鹿来鳴く初萩の 花妻どひに来鳴くさを鹿