我が岡にさを鹿来鳴く初萩の
花妻どひに来鳴くさを鹿
- 歌の意味
-
我が家の岡に雄鹿が来て鳴いている。咲き初めた萩の花を妻として求め、来て鳴く雄鹿よ。
- 鑑賞
-
巻第八 秋雑歌 1541
詞書「大宰帥大伴卿の歌二首」
我が家の岡に雄鹿が来て鳴くのを聞き、咲き初めた萩の花を妻として求めて鳴いているのだと詠む歌である。秋の鹿と萩の花という取り合わせを、恋する鹿と花の妻という優美な見立てで描いている。
作者の大伴旅人は、大伴安麻呂の子で、家持の父にあたる。大宰帥として筑紫に赴任し、のちに大納言に至った。
初句「我が岡に」は、自分の家のある岡にの意である。
二句「さを鹿来鳴く」は、雄鹿が来て鳴くの意で、ここで句切れとなる。結句の「来鳴くさを鹿」と同じ語を順序を入れ替えて繰り返し、一首を鹿の声で包み込んでいる。
三句「初萩の」は、咲き初めた萩の意である。
四句「花妻どひに」の「花妻」は、萩の花を妻に見立てた語で、「つまどひ」は妻を求めて訪ねることである。
結句「来鳴くさを鹿」は体言止めで、二句を反転させた形で繰り返し、妻を求めて鳴く鹿の姿を印象づけている。
さをしか:雄鹿、「さ」は接頭語
はなづま:花を妻に見立てた語
つまどひ:妻を求めて訪ねること
- 作者
-
大伴旅人
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
今朝の朝明雁が音寒く聞きしなへ 野辺の浅茅ぞ色づきにける
- 次の歌
-
我が岡の秋萩の花風をいたみ 散るべくなりぬ見む人もがも