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由良の崎潮干にけらし白神の
磯の浦廻をあへて漕ぐなり

歌の意味
由良の崎は潮が引いたらしい。白神の磯の入り組んだ浦を、難儀しながら漕いでいる音が聞こえる。
鑑賞
巻第九 雑歌 1671

詞書は前の歌に続き「大宝元年辛丑冬十月、太上天皇、大行天皇、紀伊国に幸す時の歌十三首」
 由良の崎で潮が引いたらしく、白神の磯の浦を難儀しながら船を漕ぐ音が聞こえると詠む歌である。聞こえてくる櫓の音から潮の様子を推し量る、音を手がかりにした叙景である。
 大宝元年(701)の紀伊行幸の歌十三首の五首目である。白神の磯は由良の崎付近の磯とされるが、所在ははっきりしない。

 初句「由良の崎」は、前歌第千六百七十首の三句と同じ地名で、二首を続けて由良の崎の歌としている。
 二句「潮干にけらし」は、潮が引いたらしい、の意で、「けらし」は根拠のある推量を表す。ここで句切れとなる。本巻の第千六百八十六首の「乱れにけらし」も同じ推量の形をとる。
 三句「白神の」は、磯の名を示す。
 四句「磯の浦廻を」は、磯の入り組んだ海岸を、の意で、「浦廻」は浦の曲がりくねった所をいう。
 結句「あへて漕ぐなり」は、無理を押して漕いでいるようだ、の意である。「あへて」は困難を押しての意、「なり」は音や声によって判断する推定の助動詞で、漕ぐ音が聞こえていることを示す。

しほひ:潮が引くこと、干潮
うらみ:浦の入り組んだところ、浦のあたり
出典
万葉集
前の歌
朝開き漕ぎ出て我れは由良の崎 釣りする海人を見て帰り来む
次の歌
黒牛潟潮干の浦を紅の 玉裳裾引き行くは誰が妻