秋萩を散り過ぎぬべみ手折り持ち
見れども寂し君にしあらねば
- 歌の意味
-
秋萩が散ってしまいそうなので手折って持ち、見ているけれども寂しい。あなたではないので。
- 鑑賞
-
巻第十 秋相聞 2290
詞書は前の歌に続き「花に寄す」
萩が散ってしまいそうなので手折って眺めているが、恋人ではないので寂しいと詠んだ歌である。美しい萩の花も、恋人の代わりにはならないという思いが率直に表れている。前歌の恋人を待ちかねて散る萩に対し、この歌は散る前に手折った萩を見ても心が満たされない寂しさを詠んでいる。
初句「秋萩を」は秋萩をの意である。
二句「散り過ぎぬべみ」の「べみ」は「べし」の語幹に原因の「み」が付いた形で、散ってしまいそうなのでの意となる。字余りの句である。
三句「手折り持ち」は手折って持っての意である。
四句「見れども寂し」の「ども」は逆接で、見ているけれども寂しいの意である。ここで四句切れとなる。
結句「君にしあらねば」の「し」は強意、「ね」は打ち消しの已然形で、あなたではないのでの意となる。
たをる:手で折る
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
藤原の古りにし里の秋萩は 咲きて散りにき君待ちかねて
- 次の歌
-
朝咲き夕は消ぬる月草の 消ぬべき恋も我れはするかも