霊ぢはふ神も我れをば打棄てこそ
しゑや命の惜しけくもなし
- 歌の意味
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霊威あふれる神も、私を見捨ててほしい。ええもう、命など惜しくもない。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2661
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
霊威ある神さえも私を見捨ててほしい、もはや命など惜しくはないと、恋に絶望した激しい心を詠んだ歌である。前歌までのように神に祈り守りを願うのではなく、かえって神の加護を拒むことで、恋の苦しみの深さを表している。
本歌は次の次の歌の第二千六百六十三首と結句「惜しけくもなし」を共有している。本歌が命を惜しまないと詠むのに対し、第二千六百六十三首は名を惜しまないと詠み、命と名という別のものを捨てる覚悟で恋の激しさを表した歌が並んでいる。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「霊ぢはふ」は、霊威が盛んに働く意で、「神」にかかる枕詞である。
二句「神も我れをば」は、神も私をの意である。係助詞「も」が神までもと強め、「をば」が対象の「我れ」を取り立てている。
三句「打棄てこそ」は、見捨ててほしいの意である。「こそ」は他に対する願望を表す終助詞で、ここで句切れとなる。
四句「しゑや命の」は、ええもう、命がの意である。「しゑや」は投げやりな気持ちを表す感動詞である。
結句「惜しけくもなし」は、惜しくもないの意である。「惜しけく」は形容詞「惜し」のク語法で、本巻の第二千六百六十三首の結句と同じ言葉である。
うつつ:打ち捨てる、見捨てる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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夜並べて君を来ませとちはやぶる 神の社を祷まぬ日はなし
- 次の歌
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我妹子にまたも逢はむとちはやぶる 神の社を祷まぬ日はなし