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ゆくへなみ隠れる小沼の下思に
我れぞ物思ふこのころの間

歌の意味
流れ出る先もなく隠れている小沼のように、人知れず心の中で私は物思いをしている、このごろずっと。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 3022

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 流れ出る先もなく隠れている小沼のように、人知れず心の中で物思いを続けていると歌う。前歌に続いて隠れた沼を詠み込み、行き場のない思いを内に抱える心を描いている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「ゆくへなみ」は、流れ出る先がないので、の意である。
 二句「隠れる小沼の」は、隠れている小さな沼の、の意で、ここまでが「下思」を導く序詞となる。
 三句「下思に」は、心の中でひそかに思うことで、仮名の行では「したもひ」と読む。
 四句「我れぞ物思ふ」は、私は物思いをしている、の意で、「ぞ」は連体形「物思ふ」で結ぶ。
 結句「このころの間」は、このごろずっと、と体言止めで結んでいる。

したもひ:心の中でひそかに思うこと
をぬ:小さな沼
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
隠り沼の下ゆは恋ひむいちしろく 人の知るべく嘆きせめやも
次の歌
隠り沼の下ゆ恋ひあまり白波の いちしろく出でぬ人の知るべく