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かきつはた佐紀沢に生ふる菅の根の
絶ゆとや君が見えぬこのころ

歌の意味
佐紀沢に生える菅の根が絶えるように、二人の仲が絶えるというのか、あなたが姿を見せないこのごろだ。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 3052

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 佐紀沢に生える菅の根を序として、仲が絶えるというのか、相手が近ごろ姿を見せないと不安を募らせる女の歌である。菅の根の切れることと、二人の仲の絶えることとを重ねている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「かきつはた」は、花の「咲き」から地名の「佐紀」にかかる枕詞である。
 二句「佐紀沢に生ふる」は、奈良市北部の佐紀の沢に生える、の意で、八音の字余りである。
 三句「菅の根の」は、菅の根が、の意で、ここまでが「絶ゆ」を導く序詞となる。
 四句「絶ゆとや君が」は、仲が絶えるというのかあなたが、の意である。
 結句「見えぬこのころ」は、姿を見せないこのごろだ、の意で、本巻の第三千十五首と同じ結句である。

かきつはた:カキツバタ、「咲き」にかかる枕詞
さは:沢、湿地
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
あしひきの山菅の根のねもころに 我れはぞ恋ふる君が姿を
次の歌
あしひきの山菅の根のねもころに やまず思はば妹に逢はむかも