古典和歌stream

相思はずあるものをかも菅の根の
ねもころごろに我が思へるらむ

歌の意味
相手は私を思ってはいないというのに、どうして菅の根のように心をこめて、私は思っているのだろうか。
鑑賞
巻第十二 寄物陳思 3054

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 相手は自分を思っていないのに、なぜこれほど心をこめて思っているのかと、報われない恋を自ら嘆く歌である。菅を詠む一連の中で、片思いの苦しさを述べている。
 作者は未詳である。巻第十二は「古今相聞往来歌類之下」と題され、名の伝わらない人々の恋の歌を部立ごとに収めている。

 初句「相思はず」は、互いに思い合うことなく、の意で、本巻の第二千九百三十三首と同じ初句である。
 二句「あるものをかも」は、あるものなのに、の意で、「かも」は疑問を表し、結句の「らむ」と呼応する。
 三句「菅の根の」は、「ねもころ」を導く枕詞である。
 四句「ねもころごろに」は、念入りに、心をこめて、の意で、本巻の第二千八百五十七首と同じ句である。
 結句「我が思へるらむ」は、私は思っているのだろうか、の意で、仮名の行では「わがもへるらむ」と読む。報われない恋を自ら嘆いている。

すげ:カヤツリグサ科の草
作者
作者未詳
出典
万葉集
前の歌
あしひきの山菅の根のねもころに やまず思はば妹に逢はむかも
次の歌
山菅のやまずて君を思へかも 我が心どのこの頃はなき