あしひきの山きへなりて遠けども
心し行けば夢に見えけり
- 歌の意味
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山が隔てていて遠いけれども、心が通って行くので、夢に見えたことだ。
- 鑑賞
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巻第十七 3981
詞書は前の歌に続き「恋緒を述ぶる歌一首并せて短歌」の反歌
山が隔てて遠く離れているけれども、心が通って行くので妻が夢に見えた、と遠い妻との心のつながりを詠んだ歌である。天平十九年(747)三月二十日の夜、家持が都に残した妻への恋情をにわかに起こして詠んだ長歌に添えた反歌である。長歌では、大君の命で越中に下ってから年が改まり、春の花が移ろうまで逢えず、夢には見ても現実には逢えない恋しさが積もったこと、霍公鳥の鳴く月になったら近江路を経て奈良の家に帰り、門に立って待つ妻に早く逢いたいことが詠まれている。距離の隔たりを越えて心が行き通うことに、わずかな慰めを見出している。
作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
左注に「右、三月二十日の夜裏に、忽ちに恋情を起こして作る。大伴宿祢家持」とある。
初句「あしひきの」は山にかかる枕詞である。
二句「山きへなりて」の「き」は接頭語ともされ、「へなる」は隔たる意で、山が隔てていて、の意である。
三句「遠けども」は、遠いけれども、の意で、逆接で下に続く。
四句「心し行けば」の「し」は強意で、自分の心が妻のもとへ行くので、の意である。
結句「夢に見えけり」は、夢に見えたことだ、の意である。本巻の第三千九百七十七首では相手の思いのために夢に見えたとしており、本歌は自分の心が通うためとする点で対照をなしている。
へなる:隔たる
いめ:夢
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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ぬばたまの夢にはもとな相見れど 直にあらねば恋ひやまずけり
- 次の歌
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春花のうつろふまでに相見ねば 月日数みつつ妹待つらむぞ