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石上布留や男の太刀もがな
組の緒垂でて宮路通はむ

歌の意味
石上の布留の男が帯びるような太刀がほしいものだ。組紐の緒を垂らして、宮へ通う道を行き来しよう。
鑑賞
巻第十 神楽歌 582

 石上の布留の男の太刀がほしい、それに組紐の緒を垂らして宮路を通おうと詠む歌である。神の剣を祭る石上の地を背景に、立派な太刀を帯びて晴れやかに宮へ通う姿へのあこがれを表している。次歌の第五百八十三首とともに太刀を歌う。
 本巻は神楽歌の巻で、巻頭から第五百八十六首までは、作者も詞書も記されない、宮中の御神楽で歌われた歌が並ぶ。採物のうち剣を歌うものに通じる歌である。石上は大和国の地名で、神剣を祭る石上神宮がある。

 初句「石上」は、大和国の地名で、二句の「布留」にかかる枕詞である。
 二句「布留や男の」は、布留の男の、の意で、「や」は語調を整える間投助詞である。
 三句「太刀もがな」は、太刀がほしいものだ、の意で、「もがな」は願望を表す終助詞である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。次歌の第五百八十三首の二句「目貫の太刀を」と、太刀の語を共有している。
 四句「組の緒垂でて」は、組紐の緒を垂らして、の意で、太刀を飾る緒をいう。
 結句「宮路通はむ」は、宮へ通う道を行き来しよう、の意で、「む」は意志の助動詞である。

ふる:布留。大和国の地名。石上神宮がある
くみのを:組の緒。組紐の緒。太刀を飾るのに用いる
しづ:垂づ。垂らす
みやぢ:宮路。宮へ通う道
出典
拾遺和歌集
前の歌
四方山の人の宝にする弓を 神の御前に今日奉る
次の歌
銀の目貫の太刀を提げ佩きて 奈良の都を練るや誰が子ぞ