ね覺ねはきかぬ成らん荻風は
ふかさらめやは秋のよな〳〵
- 歌の意味
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あなたは寝覚めをなさらないから聞こえないのだろう。荻の葉を吹く風が吹かないことなどあろうか。秋の夜ごとに。
- 鑑賞
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七夕の贈答ののち、七月も末になった。帥の宮から「たいそう疎遠になってしまったが、どうして時々は便りをくれないのか。私を人並みにも思っていないようだ」という文が届いた。
女は和泉式部のことで、大江雅致の娘であり、和泉守橘道貞の妻として小式部内侍をもうけた。帥の宮は冷泉天皇の第四皇子敦道親王で、大宰帥であったことからこう呼ばれる。
便りをよこさないと責める帥の宮に対し、自分は秋の夜ごとに思いを寄せているのに、と言い返すために、和泉式部はこの歌を詠んだ。
帥の宮はすぐに折り返し、「ああ、あなた。寝覚めねばとは。物思いをするときにこそ寝覚めもするだろうが、私の思いをいいかげんなものとは」と書いて、「荻風はふかはいもねて今よりそ驚すかときくへかりける」と返した。
初句と第二句の「ね覺ねはきかぬ成らん」は、寝覚めないから聞かないのでしょう、という意味で、「ねば」は打消の助動詞「ず」の已然形に「ば」が付いた確定条件、「なるらむ」は断定と現在推量の組み合わせである。
第三句から結句の「荻風はふかさらめやは秋のよな〳〵」は、荻を吹く風は吹かないことがあろうか、秋の夜ごとに、という意味で、「やは」は反語の係助詞である。荻の葉音は人の訪れや便りを思わせるものとして和歌に詠まれ、ここでは和泉式部が夜ごとに寄せている思いをたとえる。便りをしないのではなく、あなたが寝覚めて気づかないだけだと、責める帥の宮をやんわりと言い返している。
荻(おぎ):水辺に生えるイネ科の草。秋風にそよぐ葉音が詠まれる
寝覚む(ねざむ):夜中に目が覚める
- 作者
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和泉式部
- 出典
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和泉式部日記
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詠むらん空をたにみす棚機に いまるはかりの我みと思へは
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荻風はふかはいもねて今よりそ 驚すかときくへかりける