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おつるなみたは雨とこそふれ

歌の意味
こぼれ落ちる私の涙は、雨となって降り続けている。
鑑賞
 霜の朝の贈答の夜、帥の宮は和泉式部のもとを訪れ、いつものようにとりとめのない話をしていたが、「もしあちらにお連れしたあとで、私がよそへ行ったり、法師になったりして、あなたにお会いしなくなったら、不本意だとお思いになるだろうか」と心細げに言った。和泉式部は、どのようにお考えが変わったのだろうか、またそのようなことが起こりそうなのだろうかと思うと、ひどく悲しくなって泣いてしまった。みぞれまじりの雨が静かに降るなか、帥の宮は少しもまどろまず、この世のことばかりでなく来世のことまで、しみじみとしたことを語り続けた。和泉式部は、思いがけない宮仕えのようなものではあるが、何事もお嫌いにならないお心なので、自分の心のほどもお見せしようと思って決心したのに、このままでは自分もかねての望みどおり出家する身になるばかりだと思うと、たいそう悲しく、何も申し上げずにつくづくと嘆いていた。
 女は和泉式部のことで、大江雅致の娘であり、和泉守橘道貞の妻として小式部内侍をもうけた。帥の宮は冷泉天皇の第四皇子敦道親王で、大宰帥であったことからこう呼ばれる。
 嘆く和泉式部を見て、帥の宮が「なをさりのあらましことに夜もすから」と上の句を詠みかけたので、和泉式部はこの下の句を付けて答えた。
 帥の宮はいつもより心細いことをいろいろと口にし、夜が明けると帰っていった。和泉式部は、頼りないことではあるが、所在なさの慰めにもと思い立ったことなのに、それならどうしたらよいのかと思い乱れることになる。

 この下の句は、帥の宮の上の句に和泉式部が付けて一首を完成させた短連歌の後半である。「おつるなみたは」は、こぼれ落ちる涙は、の意で、帥の宮の「夜もすから」を受け、一晩じゅう泣いていたことを示している。
 「雨とこそふれ」は、雨となって降ることだ、という意味で、「こそ〜ふれ」は係り結びである。その夜降っていたみぞれまじりの雨と、自分の涙とを重ね、いいかげんな仮定の話と言う帥の宮に対し、自分にとってはそれほど深い悲しみなのだと、景物に託して答えている。

降る(ふる):雨や雪が空から落ちる
作者
和泉式部
出典
和泉式部日記
前の歌
なをさりのあらましことに夜もすから
次の歌
現にて思へはいはんかたもなし 今宵のことを夢になさはや