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年暮れぬ春来べしとは思ひ寝に
まさしく見えてかなふ初夢

歌の意味
年は暮れた。春が来るはずだと思いながら寝たところ、その思いのとおりにはっきりと夢に見えて、初夢がかなったことだ。
鑑賞
春歌 1

詞書「立つ春の朝よみける」
 立春の朝に詠まれた歌で、山家集の巻頭に置かれた一首である。年の暮れに「春が来るはずだ」と思いながら眠りにつくと、その思いがはっきりと夢に現れ、目覚めると本当に春になっていた、という喜びを詠んでいる。
 詞書の「立つ春の朝」から、立春の当日、新しい季節を迎えた朝の感慨であることがわかる。思いを抱いて寝ると夢に見るという「思ひ寝」の考え方を用い、その夢が正夢となる形で春の到来を祝っている。春の部の結びである第百七十三首が去りゆく春の夕暮を惜しむ歌であり、春を迎える朝の歌と春を見送る夕暮の歌とで、春の部の始めと終わりが呼応している。

 初句「年暮れぬ」は、完了の助動詞「ぬ」で旧年が終わったことを言い切る初句切れである。
 二句「春来べしとは」の「べし」は、春が当然来るはずだという見込みを表す。「とは」で、その見込みが三句の思ひ寝の中身であることを示す。
 三句「思ひ寝に」は、あることを思いながら眠ることをいう。思いを抱いて寝ると、その事柄が夢に現れると考えられていた。
 四句「まさしく見えて」の「まさしく」は、夢の内容が現実と違わないこと、つまり正夢であったことを表す。
 結句「かなふ初夢」は体言止めで、思い描いた春の到来がそのまま現実になったことを、初夢がかなったと言い表して一首を結んでいる。

おもひね:あることを思いながら寝ること
はつゆめ:年が改まって初めて見る夢
作者
西行
出典
山家集
次の歌
山の端の霞むけしきにしるきかな 今朝よりやさは春の曙