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類なき花をし枝に咲かすれば
桜に並ぶ木ぞなかりける

歌の意味
ほかに比べるもののない花を枝に咲かせるので、桜に肩を並べる木はないことだ。
鑑賞
春歌 73

詞書は前の歌に続き「花の歌あまたよみけるに」
 桜は比べるもののないほど美しい花を枝に咲かせるので、桜と肩を並べる木はほかにない、と桜をたたえる歌である。
 理屈立てて桜の比類なさを言い切ることで、桜への絶対的な愛着を表している。前二首の花と月との並びから、再び桜そのものの讃美へと戻っている。

 初句「類なき」は、ほかに比べるもののない、の意である。
 二句「花をし枝に」の「し」は強意の副助詞で、そのような花をこそ、と強めている。
 三句「咲かすれば」は、咲かせるので、の意で、理由を示す。
 四句「桜に並ぶ」は、桜と肩を並べる、の意である。「ぞ」を受ける係り結びは結句にある。
 結句「木ぞなかりける」の「ぞ」は強意の係助詞で、連体形「ける」と係り結びをなし、桜に並ぶ木はないと強く言い切って結んでいる。

たぐひ:比べるもの、同類
ならぶ:肩を並べる、匹敵する
作者
西行
出典
山家集
前の歌
花散らで月は曇らぬ世なりせば 物を思はぬ我が身ならまし
次の歌
身を分けて見ぬ梢なく尽くさばや 万の山の花の盛りを