花散らで月は曇らぬ世なりせば
物を思はぬ我が身ならまし
- 歌の意味
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花が散らず、月が曇ることのない世であったなら、物思いをすることのない我が身であっただろうに。
- 鑑賞
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春歌 72
詞書は前の歌に続き「花の歌あまたよみけるに」
花が散ることもなく、月が曇ることもない世の中であったなら、自分は物思いに悩むこともなかっただろう、と詠む。花は散り、月は曇るという世の常が、尽きない物思いの原因になっていることを嘆いている。
前歌に続いて花と月とを並べ、前歌が花と月を存分に味わいたいと願ったのに対し、この歌では花と月がかなわぬものであるゆえの物思いを詠んでいる。花と月とに心を寄せる西行の姿が、二首を通して浮かび上がる。
初句「花散らで」は、花が散らないで、の意である。
二句「月は曇らぬ」は、月は曇らない、の意で、初句と対をなす。
三句「世なりせば」は、そのような世であったならば、の意で、事実に反する仮定を表す。
四句「物を思はぬ」は、思い悩むことのない、の意である。
結句「我が身ならまし」の「まし」は反実仮想で、三句の「せば」と呼応し、そうであったらよかったのに、という嘆きを込めて結んでいる。
ものおもふ:あれこれと思い悩む
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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引きかへて花見る春は夜はなく 月見る秋は昼なからなん
- 次の歌
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類なき花をし枝に咲かすれば 桜に並ぶ木ぞなかりける