桜咲く四方の山辺をかぬる間に
のどかに花を見ぬ心地する
- 歌の意味
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桜の咲く四方の山辺に同時に心を向けているうちに、落ち着いて花を見ていないような心地がする。
- 鑑賞
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春歌 75
詞書は前の歌に続き「花の歌あまたよみけるに」
桜の咲く四方の山々に、あちらもこちらもと心を配っているうちに、かえってどの花も落ち着いて見ていないような気がする、と詠む。
前歌で身を分けてすべての山の花を見尽くしたいと願った心が、この歌では、すべてに心を向けるがゆえにどれも心ゆくまで味わえないという嘆きに転じている。欲張る心と満たされない心とを、二首で表裏のように描いている。
初句「桜咲く」は、桜の咲いている、の意である。
二句「四方の山辺を」は、四方の山のあたりを、の意で、前歌の「万の山」と響き合う。
三句「かぬる間に」の「かぬ」は、いくつものことに同時に心を向ける意である。
四句「のどかに花を」は、落ち着いてゆったりと花を、の意である。
結句「見ぬ心地する」は、見ていないような心地がする、の意で、すべてを見ようとするあまりの物足りなさを表して結んでいる。
よも:東西南北、あたり一帯
かぬ:いくつものことに同時に心を向ける
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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身を分けて見ぬ梢なく尽くさばや 万の山の花の盛りを
- 次の歌
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花に染む心のいかで残りけん 捨て果ててきと思ふ我が身に