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岸近み植ゑけん人ぞ恨めしき
波に折らるる山吹の花

歌の意味
こんなに岸に近いところに植えたであろう人が恨めしい。波に折られてしまう山吹の花よ。
鑑賞
春歌 165

詞書「山吹」
 山吹を題とする歌で、次歌と二首が並ぶ。岸辺に咲く山吹が、打ち寄せる波に折られてしまうのを見て、こんなに岸に近い所に植えた人が恨めしい、と詠む。
 波に枝を折られる山吹を惜しむ心を、植えた人を恨むという形で表したところに工夫がある。水辺に咲く山吹の黄色と、白い波との取り合わせも思い浮かぶ。

 初句「岸近み」は、岸が近いので、の意で、「み」は原因や理由を表す。
 二句「植ゑけん人ぞ」の「けん」は過去推量で、植えたであろう人が、の意である。「ぞ」は強意の係助詞で、三句の連体形「恨めしき」と係り結びをなす。
 三句「恨めしき」は、恨めしい、の意で、係り結びにより三句切れとなる。
 四句「波に折らるる」は、打ち寄せる波に折られてしまう、の意である。
 結句「山吹の花」は体言止めで、波に折られる山吹を示して結んでいる。

やまぶき:晩春に黄色の花をつける低木
作者
西行
出典
山家集
前の歌
躑躅咲く山の岩陰夕映えて をぐらはよその名のみなりけり
次の歌
山吹の花咲く里になりぬれば ここにも井手と思ほゆるかな