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真菅生ふる山田に水をまかすれば
嬉し顔にも鳴く蛙かな

歌の意味
菅の生える山の田に水を引き入れると、いかにもうれしそうに鳴く蛙であることよ。
鑑賞
春歌 167

詞書「蛙」
 蛙を題とする歌で、次歌と二首が並ぶ。菅の生えた山あいの田に水を引き入れると、蛙がいかにもうれしそうに鳴きはじめる、と詠む。
 田に水が入ることを喜ぶかのような蛙の声を、人の表情になぞらえて描き、農村の晩春ののどかな情景を伝えている。前歌の井手の山吹に続き、井手のもう一つの景物である蛙が詠まれている。

 初句「真菅生ふる」は、菅が生えている、の意で、字余りとなっている。「真」は美称の接頭語である。
 二句「山田に水を」は、山あいの田に水を、の意である。
 三句「まかすれば」は、水を引き入れると、の意である。
 四句「嬉し顔にも」は、いかにもうれしそうな様子で、の意で、蛙を擬人化している。
 結句「鳴く蛙かな」は、鳴く蛙であることよ、と詠嘆の「かな」で結んでいる。

ますげ:菅の美称
まかす:田に水を引き入れる
かはづ:蛙
作者
西行
出典
山家集
前の歌
山吹の花咲く里になりぬれば ここにも井手と思ほゆるかな
次の歌
水錆ゐて月も宿らぬ濁り江に 我すまんとて蛙鳴くなり