古典和歌stream

山城の石田の杜のいはずとも
心のうちを照らせ月影

歌の意味
山城の石田の杜の名のように、口に出して言わなくとも、わたしの心のうちを照らしておくれ、月の光よ。
鑑賞
巻第九 雑歌上 304

 口に出して言わなくても、自分の心の内を照らして見通してほしいと、月の光に呼びかける一首である。山城国の石田の杜の「いはた」の音から「いはず」を導き、秘めた思いを月に託している。

 初句「山城の」は、山城国をいう。初句から二句までは、同音の「いはず」を導く序詞である。
 二句「石田の杜の」は、山城国の歌枕で、「いはた」の音で三句の「いはず」を導く。
 三句「いはずとも」は、逆接仮定の「とも」で、言わなくてもという意を表す。
 四句「心のうちを」は、口に出さない心の内をいう。
 結句「照らせ月影」は、命令形「照らせ」で月の光に呼びかけて結ぶ。本巻の第二百九十五首も「月影」で結んでいる。

いはたのもり:山城国の森。歌枕
つきかげ:月の光
出典
詞花和歌集
前の歌
夜もすがら富士の高嶺に雲消えて 清見が関に澄める月かな
次の歌
月にこそ昔のことは覚えけれ 我を忘るる人に見せばや