忍ぶるも苦しかりけり数ならぬ
身には涙のなからましかば
- 歌の意味
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思いを忍ぶのも苦しいことだった。物の数にも入らないこの身には、いっそ涙がなかったならばよいのに。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌上 325
思いを忍んで隠すことの苦しさを嘆き、取るに足りない身であるのだから、いっそ涙などなければよいのにと詠む一首である。涙がこぼれれば忍ぶ思いも人に知られてしまうという苦しさを、反実仮想の願いによって表している。
結句の「なからましかば」は、巻第八の巻末の第二百七十一首と同じ結句で、恋しさがなければと願ったその歌に対し、ここでは涙がなければと願っている。
初句「忍ぶるも」は、思いを人に知られないよう隠すことをいい、係助詞「も」で取り立てる。
二句「苦しかりけり」は、詠嘆の「けり」で、苦しいことだったと気づく二句切れである。
三句「数ならぬ」は、物の数に入らない、取るに足りないという意を表す。
四句「身には涙の」は、取るに足りない身にとってという意で、涙を取り上げる。
結句「なからましかば」は、反実仮想の「まし」の未然形「ましか」に「ば」が付いた仮定で、帰結を言いさし、涙がなかったならばと余情を残して結ぶ。
かずならず:物の数にも入らない。取るに足りない
しのぶ:人に知られないよう隠す
- 出典
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詞花和歌集
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神無月有明の空のしぐるるを また我ならぬ人や見るらむ
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音せぬは苦しきものを身に近く 鳴るとて厭ふ人もありけり