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音せぬは苦しきものを身に近く
鳴るとて厭ふ人もありけり

歌の意味
音沙汰のないのは苦しいものなのに、身近で鳴るからといって、その音を嫌う人もいるのだなあ。
鑑賞
巻第九 雑歌上 326

 相手からの音沙汰がないつらさを嘆き、それに比べて、身近で音が鳴るのを嫌う人もいるのだと詠む一首である。音を待ちわびる自分と、音を厭う人とを対比させ、便りのない寂しさを際立たせている。

 初句「音せぬは」は、音沙汰がない、便りがないという意で、係助詞「は」で取り立てる。
 二句「苦しきものを」は、逆接の「ものを」で、苦しいものなのにという意を表す二句切れである。
 三句「身に近く」は、自分の身の近くでという意を表す。
 四句「鳴るとて厭ふ」は、音が鳴るからといって嫌うという意で、初句の「音」と対応する。
 結句「人もありけり」は、詠嘆の「けり」で、そういう人もいるのだと気づいて結ぶ。

おと:音。また便り、音沙汰
いとふ:嫌う、避ける
作者
和泉式部
出典
詞花和歌集
前の歌
忍ぶるも苦しかりけり数ならぬ 身には涙のなからましかば
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人の世に二たび死ぬるものならば 偲びけりやと試みてまし