君が代は曇りもあらじ三笠山
峰に朝日のささむ限りは
- 歌の意味
-
わが君の御代は、曇ることもあるまい。三笠山の峰に朝日がさすかぎりは。
- 鑑賞
-
巻第十一 異本歌 416
三笠山の峰に朝日がさし続けるかぎり、君の御代にはわずかな曇りもないだろうと、御代の永遠と繁栄をことほぐ一首である。曇りのない朝日の光に、明るく治まる御代を重ねている。
本巻は、異本にだけ伝わる歌を集めたものである。本テキストには異同資料の番号が付されており、この歌は異本では巻第五 賀歌のうち、本集の第百六十三首の前後に置かれていたと見られる。「君が代は」と詠み出して「あらじ」と続ける形は、古今和歌集の大歌所御歌「君が代はかぎりもあらじ長浜の」と同じである。
本巻の巻頭の歌である。次歌の第四百十七首も「君が御代」をことほぎ、第四百十八首は同じ三笠山を詠む。第四百十九首は麓に霧の立ちこめる朝日山を詠み、峰にさす朝日と霧に包まれた麓とで景が響き合っている。巻末の第四百二十首が「先の世」をかえりみるのに対し、巻頭では御代の行く末をことほいでいる。
初句「君が代は」は、係助詞「は」で、わが君の御代を取り立てる。次歌の結句「君が御代かな」と対応する。
二句「曇りもあらじ」は、打ち消し推量の「じ」で、曇ることもあるまいという二句切れである。「曇り」は四句の「朝日」と縁をなす。
三句「三笠山」は、大和国の歌枕で、春日社の背後にある山をいう。本巻の第四百十八首も初句に三笠山を詠む。
四句「峰に朝日の」は、三笠山の峰にさす朝日をいう。本巻の第四百十九首の、麓に霧の立ちこめる朝日山と、峰と麓とで対をなす。
結句「ささむ限りは」は、推量の「む」の連体形で、朝日がさすであろうかぎりはと、条件を倒置して結ぶ。「さす」は三笠山の「笠」の縁語である。
きみがよ:天皇の治める世。御代
みかさやま:大和国の山。春日社の背後にあり、歌枕
さす:光が当たる。笠の縁で「差す」が響く
- 作者
-
大江匡房
- 出典
-
詞花和歌集
- 前の歌
-
世の中の人の心のうき雲に 空隠れする有明の月
- 次の歌
-
長浜の真砂の数も何ならじ 尽きせず見ゆる君が御代かな