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先の世の浅き契りを知らずして
人をつらしと思ひけるかな

歌の意味
前世での縁が浅かったことも知らないで、あの人を薄情だと思っていたことだ。
鑑賞
巻第十一 異本歌 420

 相手のつれなさを恨んでいたが、それは前世での縁が浅かったためであったのに、そうとも知らずに人を薄情だと思っていたと、自らをかえりみる一首である。人の仲を前世からの宿縁によるものとする仏教の考えに立ち、恨む心を静めようとする思いが表れている。
 本巻の巻末の歌である。巻頭の第四百十六首が御代の行く末をことほいだのに対し、巻末では「先の世」をかえりみており、行く末と前世とで巻の初めと終わりが向き合っている。

 初句「先の世の」は、前世をいう。巻頭の第四百十六首の「ささむ限りは」が行く末を詠んだのと対応する。
 二句「浅き契りを」は、前世からの縁が浅いことをいう。
 三句「知らずして」は、打ち消しの「ず」に「して」が付いた形で、知らないでという意を表す。
 四句「人をつらしと」は、相手を薄情だと思うことをいう。
 結句「思ひけるかな」は、詠嘆の「けり」の連体形と終助詞「かな」で、思っていたことだと気づいて結ぶ。

さきのよ:前世
ちぎり:前世からの因縁。また男女の約束
作者
赤染衛門
出典
詞花和歌集
前の歌
麓をば宇治の川霧立ちこめて 雲居に見ゆる朝日山かな