山桜散らば散らなむ惜しげなみ
よしや人見ず花の名立てに
- 歌の意味
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山桜よ、散るのならば散ってしまえ。惜しむ様子を見せる者もいないのだから。ままよ、人は見ないのだ。花の評判を立てるばかりで。
- 鑑賞
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春歌 74
詞書「屏風に山中の桜の咲きたる所」
屏風に描かれた山中の桜に寄せ、人に見られることもなく惜しまれることもない山桜に、散るなら散ってしまえと投げかける歌である。誰にも顧みられない花への、突き放すような言葉の中に、かえって花へのいとおしさがにじむ。
二句は原本に誤りがあり、校訂者が類従本によって「散らば散らなむ」と改めたもので、ここではその改訂に従う。
初句「山桜」は呼びかけの相手で、屏風に描かれた山中の桜を示す。
二句「散らば散らなむ」は同じ語を重ね、散るのならば散ってほしいと突き放す。「なむ」は願望の終助詞で、ここで句切れとなる。
三句「惜しげなみ」は、惜しむ様子もないのでの意で、「み」は理由を表す。
四句「よしや人見ず」の「よしや」はままよ、たとえの意で、人は見ないのだと言い放つ。
結句「花の名立てに」は、花の評判を立てるだけでの意である。前歌の第七十三首が人の顧みない山桜を自分だけは訪ねると詠んだのに対し、ここでは人の見ない山桜に散ってしまえと言い、同じ題材を反転した構図で詠む。
なだて:評判が立つこと、うわさになること
をしげ:惜しむ様子
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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春来れど人もすさめぬ山桜 風のたよりに我のみぞ訪ふ
- 次の歌
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滝の上の三船の山の山桜 風に浮きてぞ花も散りける