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途絶えして人も通はぬ棚橋は
月ばかりこそすみわたりけれ

歌の意味
途絶えてしまって人も通わなくなった棚橋には、月の光だけが澄みわたり、住みついたように渡っていることだ。
鑑賞
巻第三 秋歌 207

 壊れて途絶えてしまい、人も通わなくなった棚橋には、ただ月の光だけが澄みわたって渡っている、と詠む歌である。人の通わない寂しい橋と、そこを照らす月の清らかさとの対比によって、荒れた景の美しさを描いている。
 本巻の第百七十四首から第二百十七首までは月の歌が長く続き、夕月夜から八月十五夜の名月、有明の月まで、さまざまな月のありさまと月を見る心が詠まれていく。

 初句「途絶えして」は途中で切れて途絶えての意で、壊れた橋のさまをいう。
 二句「人も通はぬ」は人も通わないの意である。
 三句「棚橋は」の「棚橋」は板を棚のように渡しただけの簡単な橋である。
 四句「月ばかりこそ」は月だけがの意で、係助詞「こそ」が結句の已然形「けれ」と係り結びをなす。
 結句「すみわたりけれ」の「すむ」は、月が「澄む」意と、そこに「住む」意とを掛けた掛詞である。「わたる」は橋の縁語で、人の代わりに月が橋を渡るさまを表している。

たなはし:板を棚のように渡しただけの簡単な橋
すむ:月が「澄む」意と、「住む」意を掛ける
出典
金葉和歌集
前の歌
むら雲や月の隈をばのごふらむ 晴れゆくままに照りまさるかな
次の歌
月影のさすにまかせて行く舟は 明石の浦や泊りなるらむ