よそにのみ見てや止みなん葛城や
高間の山の峰の白雲
- 歌の意味
-
よそながら見るだけで終わってしまうのだろうか。葛城の高間の山の峰にかかる白雲を。
- 鑑賞
-
巻第十一 恋歌一 990
詞書「題しらず」
遠くから見聞きするだけの恋を詠む一連の一首目で、恋歌一の巻頭歌である。高間の山の峰にかかる白雲に寄せて、よそながら見るだけで終わるのかと嘆く。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「読人しらず」は、作者名の伝わらない歌であることを示す。
初句「よそにのみ」は、よそながらばかり、の意である。恋の相手を遠くから見るだけという距離が、巻の最初に示される。
二句「見てや止みなん」の「や」は疑問の係助詞で、「なん」で結ぶ。見るだけで終わってしまうのだろうか、という嘆きで、ここで二句切れとなる。本巻の第千十八首の躬恒歌も「見てややみなん」と結び、同じ句が繰り返される。
三句「葛城や」の「や」は詠嘆で、大和国の葛城の地を呼び出す。
四句「高間の山の」の高間の山は、大和と河内の境をなす葛城の連峰の主峰で、今の金剛山の古名とされる。
結句「峰の白雲」は体言止めである。高い峰にかかる白雲は、遠くに見えながら手の届かない相手のたとえとなっている。恋歌一の巻頭に、まだ近づくこともできない恋の始まりが置かれている。次歌も「音にのみ」と、初句を「〜にのみ」で起こしており、見るだけの恋と聞くだけの恋が並べられている。
やむ:そのまま終わりになる
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
見るままに山風荒くしぐるめり 都も今や夜寒なるらむ
- 次の歌
-
音にのみありと聞きこしみ吉野の 滝は今日こそ袖に落ちけれ