- 歌の意味
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春日野の若い紫草で摺り染めにした衣の、しのぶ摺りの乱れ模様のように、あなたを恋い忍ぶ私の心の乱れは限りも知れない。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 994
詞書「女につかはしける」
紫の染め色に寄せて女に贈った歌二首の一首目である。春日野の若紫で摺った衣の乱れ模様に寄せて、限りなく乱れる恋心を詠む。詞書によれば女に贈った歌である。
作者の「在原業平朝臣」は、平城天皇の皇子阿保親王の子である。六歌仙の一人に数えられ、『伊勢物語』の主人公に擬せられてきた。
『伊勢物語』初段では、この歌は河原左大臣源融の「みちのくのしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに」の趣によったものと記されている。
初句「春日野の」の春日野は、大和国の春日山のふもとに広がる野で、若菜摘みなどで知られた歌枕である。
二句「若紫の」は若い紫草の意で、紫草の根は染料とされた。垣間見た若く美しい姉妹を暗に指している。
三句「摺り衣」は、草木の汁を布に摺り付けて模様を染め出した衣である。初句からここまでが、下の「しのぶの乱れ」を導く序詞となる。
四句「しのぶの乱れ」の「しのぶ」は、陸奥国信夫郡の特産とされたしのぶ摺りの意と、恋い忍ぶ意を掛ける。しのぶ摺りの乱れ模様に、恋に乱れる心が重ねられている。
結句「限り知られず」は、乱れの限りも知れない、の意である。「乱れ」は河原左大臣の歌の「乱れそめにし」を受け、「紫」「摺り衣」「乱れ」が染色の縁語として連なる。巻頭から続く遠く見聞きするだけの恋や秘めた恋に対し、垣間見たその場で思いを贈る恋が置かれ、次歌の醍醐天皇の歌とともに紫の染め色で結ばれている。
すりごろも:草木の汁を摺り付けて模様を染め出した衣
しのぶ:しのぶ摺りの意と、恋い忍ぶ意を掛ける
- 作者
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在原業平
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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石上布留の早稲田のほには出でず 心のうちに恋ひやわたらん
- 次の歌
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紫の色に心はあらねども 深くぞ人を思ひそめつる