煙立つおもひならねど人知れず
わびてはふしのねをのみぞ泣く
- 歌の意味
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富士のように煙の立つ思いの火ではないけれど、人知れず思い悩んでは、床に伏して声を上げて泣くばかりである。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 1009
詞書は前の歌に続き「題しらず」
恋の煙を詠む一連の二首目である。富士のように煙の立つ思いの火ではないが、人知れず思い悩んでは、伏して声を上げて泣くばかりだと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「深養父」は清原元輔の祖父で、清少納言の曾祖父にあたる。琴の名手としても知られた。
初句「煙立つ」は、富士の山のように煙の立ちのぼる、の意である。
二句「おもひならねど」の「おもひ」は、恋の思いに「火」を掛ける。煙の立つほどの思いの火ではないが、と打ち消して起こす。
三句「人知れず」は、人に知られないで、の意で、表に出ない恋であることを示す。
四句「わびてはふしの」の「わぶ」は思い悩む意で、「ふし」は、富士の意と、床に臥す意の「臥し」を掛ける。
結句「ねをのみぞ泣く」の「ね」は、富士の「嶺」と、泣き声の「音」を掛ける。「ぞ」は強意の係助詞で、「泣く」で結ぶ。前歌の貫之歌が富士の山のように燃えようと詠んだのに対し、この歌は煙の立つほどではないと打ち消しつつ、富士の嶺に寄せて泣く恋を詠み、同じ富士を別の向きから扱っている。
おもひ:恋の思いの意と、火の意を掛ける
わぶ:思い悩む、つらく思う
ふし:富士の意と、臥す意の「臥し」を掛ける
ね:嶺の意と、泣き声の意の「音」を掛ける
- 作者
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清原深養父
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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しるしなき煙を雲にまがへつつ 夜を経て富士の山と燃えなん
- 次の歌
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風吹けば室の八島の夕煙 心の空に立ちにけるかな