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今日もまたかくやいぶきのさしも草
さらば我のみ燃えやわたらん

歌の意味
今日もまた、あなたはこのように言うのだろうか。伊吹山のさしも草のように、それならば私ひとりが燃え続けてゆくのだろうか。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 1012

詞書「題しらず」
 山に寄せて恋を詠む一連の二首目である。今日もまたそう言うのかと相手のつれなさを嘆き、それならば伊吹山のさしも草のように自分ひとりが燃え続けるのかと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「和泉式部」は越前守大江雅致の娘である。和泉守橘道貞の妻となったことから和泉式部と呼ばれ、のち上東門院彰子に仕えた。『和泉式部日記』がある。

 初句「今日もまた」は、今日もやはり、の意で、相手の同じ態度が繰り返されてきたことを示す。
 二句「かくやいぶきの」の「いぶき」は、このように言うのか、の意の「言ふ」と、さしも草の名所である伊吹山の「伊吹」を掛ける。「や」は疑問の係助詞で、「言ふ」で結ぶ。
 三句「さしも草」は、灸に用いるもぐさの原料となるよもぎで、燃えるものとして恋の火に結び付けて詠まれた。
 四句「さらば我のみ」は、それならば私ひとりが、の意で、相手の冷淡さを受けて自分ひとりの恋へと転じる。
 結句「燃えやわたらん」の「や」は疑問の係助詞で、「らん」で結ぶ。さしも草が燃えるように、思いの火に燃え続けるのかと嘆く。本巻の第九百九十三首や第千一首の「恋ひやわたらん」と同じく「〜やわたらん」と結び、ひとり続く恋の嘆きが重なる。前歌の三笠の山に続き、伊吹山が置かれている。

いぶき:このように言うのかの意の「言ふ」と、伊吹山の「伊吹」を掛ける
さしもぐさ:灸に用いるもぐさの原料となるよもぎ
わたる:ずっと〜し続ける
作者
和泉式部
出典
新古今和歌集
前の歌
白雲の峰にしもなど通ふらん 同じ三笠の山の麓を
次の歌
筑波山端山繁山しげけれど 思ひいるには障らざりけり