水の上に浮きたる鳥の跡もなく
おぼつかなさを思ふころかな
- 歌の意味
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水の上に浮かぶ鳥が跡を残さないように、あなたからは何の便りの跡もなく、気がかりなことばかりを思うこのごろであるよ。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 1021
詞書「たびたび返事せぬ女に」
謙徳公歌二首の二首目である。水に浮かぶ鳥が跡を残さないように、相手から便りの跡もなく、気がかりでならないと詠む。詞書によれば、たびたび手紙を送っても返事をくれない女に贈った歌である。
作者の「謙徳公」は前歌から続く表記で、藤原伊尹である。右大臣藤原師輔の長男で、摂政太政大臣に至った。謙徳公は死後に贈られた諡である。家集に『一条摂政御集』がある。
初句「水の上に」は、水面の上に、の意である。
二句「浮きたる鳥の」は、水面に浮かんでいる水鳥の、の意である。
三句「跡もなく」は、水鳥が水面に跡を残さないように、の意で、初句からここまでが、返事の跡もないことを導く。「跡」は筆跡、便りの意に通じる。
四句「おぼつかなさを」は、相手の様子がわからず気がかりなことを、の意である。
結句「思ふころかな」は詠嘆の「かな」で結ぶ。前歌が春の雨風に寄せてあふれる涙を詠んだのに対し、この歌は静かな水面の鳥に寄せて、返事のない不安を詠む。次の一連でも「ほのかに」「跡をだに」と、わずかなしるしを求める歌が続く。
あと:通り過ぎたしるし、また筆跡
- 作者
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藤原伊尹
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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春風の吹くにもまさる涙かな 我がみなかみも氷解くらし
- 次の歌
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片岡の雪間に根ざす若草の ほのかに見てし人ぞ恋しき