跡をだに草のはつかに見てしがな
むすぶばかりのほどならずとも
- 歌の意味
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せめてあなたの筆跡だけでも、萌え出たばかりの草のようにほんのわずかでも見たいものだ。草を結べるほどに伸びてはいなくても、契りを結ぶほどの仲ではなくても。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 1023
詞書「返事せぬ女のもとにつかはさんとて人のよませ侍りければ二月ばかりによみ侍りける」
かすかなしるしを求める恋を詠む一連の二首目である。契りを結ぶほどの仲でなくとも、せめて筆跡だけでもわずかに見たいと、萌え出たばかりの草に寄せて詠む。詞書によれば、返事をくれない女に贈るため、ある人に頼まれて二月ごろに詠んだ歌である。
作者の「和泉式部」は越前守大江雅致の娘である。和泉守橘道貞の妻となったことから和泉式部と呼ばれ、のち上東門院彰子に仕えた。『和泉式部日記』がある。
初句「跡をだに」の「跡」は筆跡の意で、「だに」は、せめて〜だけでも、の意である。本巻の第千二十一首の謙徳公歌の「跡もなく」と同じく、返事のない女への歌であり、跡を求める思いが共通する。
二句「草のはつかに」は、萌え出たばかりの草がわずかにのぞくように、ほんのわずかに、の意である。二月の若草に寄せる。
三句「見てしがな」の「てしがな」は願望で、見たいものだ、の意である。ここで三句切れとなる。
四句「むすぶばかりの」の「むすぶ」は、草を結ぶ意と、契りを結ぶ意を掛ける。
結句「ほどならずとも」は、それほどの程度ではなくとも、の意で、草が結べるほどに伸びていなくても、契りを結ぶほどの仲でなくても、と重ねて言う。前歌の好忠歌の「若草」「ほのかに見てし」に対し、「草のはつかに見てしがな」と見たことを願いに転じており、二首が草の芽とわずかに見ることで対をなす。
あと:筆跡
むすぶ:草を結ぶ意と、契りを結ぶ意を掛ける
- 作者
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和泉式部
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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片岡の雪間に根ざす若草の ほのかに見てし人ぞ恋しき
- 次の歌
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霜の上に跡踏みつくる浜千鳥 行方もなしと音をのみぞ泣く