忘れてはうち嘆かるる夕べかな
我のみ知りて過ぐる月日を
- 歌の意味
-
ふと忘れては、思わず嘆いてしまう夕べであるよ。この恋は、私ひとりだけが知って過ぎてゆく月日であるのに。
- 鑑賞
-
巻第十一 恋歌一 1035
詞書は前の歌に続き「百首歌の中に忍恋を」
長く秘めた恋を詠む一連の三首目である。自分ひとりが知るだけの恋であることをふと忘れて、夕べに思わず嘆いてしまうと詠む。詞書によれば、前歌と同じ百首歌の中の「忍恋」の題による歌である。
作者の「式子内親王」は前歌から続く表記で、後白河天皇の皇女である。賀茂の斎院を務め、のち出家した。藤原俊成に和歌を学んだ。
初句「忘れては」は、ふと忘れては、の意で、自分ひとりの秘めた恋であることを忘れて、の意がこもる。
二句「うち嘆かるる」の「るる」は自発の助動詞で、思わず嘆いてしまう、の意である。
三句「夕べかな」は詠嘆の「かな」で、ここで三句切れとなる。夕べは恋人の訪れを待つ時刻である。
四句「我のみ知りて」は、私ひとりだけが知って、の意である。
結句「過ぐる月日を」の「を」は詠嘆を含んだ逆接で、過ぎてゆく月日であるのに、の意である。上の句と倒置になっている。本巻の第千三十三首の後鳥羽院歌の「夕暮の空」と同じく夕べの時刻を詠み、前歌の命に対して、ここでは過ぎてゆく月日が詠まれている。
うちなげく:思わずため息をつく
- 作者
-
式子内親王
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
玉の緒よ絶えなば絶えね長らへば 忍ぶることの弱りもぞする
- 次の歌
-
我が恋は知る人もなしせく床の 涙もらすなつげの小枕