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濁り江のすまんことこそかたからめ
いかでほのかに影を見せまし

歌の意味
濁った入り江の水が澄むことが難しいように、あなたと共に住むことこそ難しいだろうが、何とかしてほのかにでも姿を見せたいものだ。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 1053

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 逢えない恋を地名や景物に寄せて詠む一連の六首目である。濁り江が澄みにくいように共に住むことは難しくとも、何とかしてほのかにでも姿を見せたいと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「読人しらず」は前歌から続く表記で、作者名の伝わらない歌であることを示す。

 初句「濁り江の」は、水の濁った入り江の、の意である。
 二句「すまんことこそ」の「すま」は、水が澄む意の「澄む」と、共に住む意の「住む」を掛ける。「こそ」は係助詞で、三句の「め」で結ぶ。
 三句「かたからめ」は、難しいだろうが、の意で、逆接で下の句に続く。
 四句「いかでほのかに」は、何とかしてかすかにでも、の意である。本巻の第千二十二首の好忠歌の「ほのかに見てし」と同じく、かすかな逢瀬を思う。
 結句「影を見せまし」の「影」は水に映る姿で、「まし」は、〜したいものだ、とためらいを含む願望を表す。「濁り」「澄む」「影」が水の縁語として連なる。前歌の「かごとばかりも」に続き、ほのかにでも、とわずかな逢瀬を願っている。

にごりえ:水の濁った入り江
すむ:水が澄む意と、共に住む意を掛ける
かげ:水に映る姿
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
前の歌
東路の道の果てなる常陸帯の かごとばかりも逢はんとぞ思ふ
次の歌
時雨降る冬の木の葉の乾かずぞ 物思ふ人の袖はありける