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時雨降る冬の木の葉の乾かずぞ
物思ふ人の袖はありける

歌の意味
時雨の降る冬の木の葉が乾く間もないように、物思いをする人の袖は乾かずにいることだ。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 1054

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 逢えない恋を地名や景物に寄せて詠む一連の七首目である。時雨に濡れる冬の木の葉が乾かないように、恋に物思う人の袖は乾くことがないと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「読人しらず」は前歌から続く表記で、作者名の伝わらない歌であることを示す。

 初句「時雨降る」は、時雨の降る、の意である。
 二句「冬の木の葉の」は、冬の木の葉の、の意で、初句からここまでが、濡れて乾かない木の葉のたとえとして下に続く。
 三句「乾かずぞ」の「ぞ」は強意の係助詞で、結句の「ける」で結ぶ。
 四句「物思ふ人の」は、恋に物思いをする人の、の意である。
 結句「袖はありける」は、袖はあることだ、の意である。本巻の第千四十首の貫之歌の「乾く時なき」と同じく、乾くことのない袖を詠み、第千二十八首から第千三十首で詠まれた時雨がここにも現れる。

しぐれ:秋の末から冬の初めに降ったりやんだりする雨
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
前の歌
濁り江のすまんことこそかたからめ いかでほのかに影を見せまし
次の歌
ありとのみ音に聞きつつ音羽川 渡らば袖に影も見えなん