ありとのみ音に聞きつつ音羽川
渡らば袖に影も見えなん
- 歌の意味
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あなたがいるとばかり噂に聞きながら、音羽川を渡ったならば、濡れた袖にあなたの姿も映って見えるだろう。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 1055
詞書は前の歌に続き「題しらず」
逢えない恋を地名や景物に寄せて詠む一連の八首目である。いるとばかり噂に聞く相手を、音羽川を渡れば濡れた袖に映る姿として見られるだろうと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「読人しらず」は前歌から続く表記で、作者名の伝わらない歌であることを示す。
初句「ありとのみ」は、いるとばかり、の意である。本巻の第九百九十七首の是則歌の「ありとは見えて」と同じく、いると知りながら逢えない相手を思う。
二句「音に聞きつつ」は、噂に聞きながら、の意で、本巻の第九百九十一首の「音にのみありと聞きこし」と語を共有する。
三句「音羽川」は山城国の歌枕で、二句の「音」を重ねて導かれる。
四句「渡らば袖に」は、川を渡ったならば、水に濡れる袖に、の意である。
結句「影も見えなん」の「なん」は強意と推量で、きっと見えるだろう、の意である。影は水に映る姿で、前歌までの濡れた袖と、前々歌の「影を見せまし」を受け、濡れた袖に相手の姿を映そうとする。
おと:うわさ、評判
かげ:水に映る姿
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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時雨降る冬の木の葉の乾かずぞ 物思ふ人の袖はありける
- 次の歌
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水茎の岡の木の葉を吹き返し 誰かは君を恋ひんと思ひし