霜氷こころもとけぬ冬の池に
夜更けてぞ鳴く鴛の一声
- 歌の意味
-
霜が降り氷が張って、池の真ん中まで解けずに凍った冬の池で、夜が更けて鳴くおしどりの一声よ。私の心も打ち解けないまま、ひとり泣いている。
- 鑑賞
-
巻第十一 恋歌一 1059
詞書「題しらず」
冬の氷に寄せて解けない心を詠む歌二首の二首目である。池の真ん中まで凍った冬の池で、夜更けに鳴く鴛の一声に、打ち解けない心を抱えてひとり泣く思いを重ねる。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「藤原元真」は平安時代中期の歌人で、三十六歌仙の一人に数えられる。家集に『元真集』がある。
初句「霜氷」は、霜と氷の意で、冬の寒さを示す。
二句「こころもとけぬ」の「こころ」は、池の中心の意と、人の心を掛け、「とけ」は、氷が解ける意と、心が打ち解ける意を掛ける。
三句「冬の池に」は、冬の池で、の意で、六音の字余りとなっている。
四句「夜更けてぞ鳴く」の「ぞ」は強意の係助詞で、「鳴く」で結ぶ。
結句「鴛の一声」は体言止めである。鴛は雌雄の仲がよい鳥とされ、ひとり鳴くその声が、打ち解けない相手を思う孤独を示す。前歌の兼輔歌の「心とけず」を受けて「こころもとけぬ」とし、凍った袖から凍った池へと景を広げている。次歌も元真の歌で、涙の川を詠む。
こころ:池の中心の意と、人の心を掛ける
とく:氷が解ける意と、心が打ち解ける意を掛ける
をし:おしどり、雌雄の仲がよいとされる水鳥
- 作者
-
藤原元真
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
冬の夜の涙にこほる我が袖の 心とけずも見ゆる君かな
- 次の歌
-
涙川身もうくばかり流るれど 消えぬは人のおもひなりけり