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いかにせん久米路の橋の中空に
渡しも果てぬ身とやなりなん

歌の意味
どうしたらよいだろう。久米路の岩橋が中空のまま架け渡されなかったように、思いを遂げきれない中途半端な身となってしまうのだろうか。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 1061

詞書「女につかはしける」
 実方歌二首の一首目である。久米路の岩橋が架け渡されずに終わったように、思いを遂げきれない中途半端な身となるのかと嘆く。詞書によれば女に贈った歌である。
 作者の「実方朝臣」は藤原実方である。侍従藤原定時の子で、左大臣藤原師尹の孫にあたる。左近衛中将に至ったが、陸奥守として下向し、その任地で没した。

 初句「いかにせん」は、どうしたらよいのだろう、の意で、ここで初句切れとなる。
 二句「久米路の橋の」の久米路の橋は、大和国の葛城山から吉野の金峰山へ岩橋を架けようとして、葛城の一言主の神が完成させなかったと伝える橋で、途中で絶えたもののたとえとされた。
 三句「中空に」は、どちらつかずで宙に浮いたさまをいう。
 四句「渡しも果てぬ」は、橋を架け渡しきれない意に、思いを遂げきれない意を重ねる。
 結句「身とやなりなん」の「や」は疑問の係助詞で、「なん」で結ぶ。中途半端な身となってしまうのだろうか、の意である。前歌までの涙や火に寄せた恋から、架け渡されない橋という伝説に寄せた恋へ移る。次歌も実方の歌で、女から贈られた杉の実に寄せて詠む。

くめぢのはし:葛城山から金峰山へ架けようとして完成しなかったと伝える岩橋
なかぞら:どちらつかずで宙に浮いたさま
作者
藤原実方
出典
新古今和歌集
前の歌
涙川身もうくばかり流るれど 消えぬは人のおもひなりけり
次の歌
誰ぞこの三輪の檜原も知らなくに 心のすきの我を尋ぬる