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我が恋は言はぬばかりぞ難波なる
葦のしの屋のしたにこそ焚け

歌の意味
私の恋は口に出して言わないだけだ。難波の葦で葺いた小屋で下のほうに火を焚くように、心の内では燃えているのだ。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 1063

詞書「題しらず」
 水辺や海辺の景に寄せて絶えない思いを詠む一連の一首目である。恋を口に出さないだけで、難波の葦の小屋の下に火を焚くように、心の内では燃えていると詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「小弁」は平安時代中期の女房で、後朱雀天皇の皇女祐子内親王に仕えた。歌人の祐子内親王家紀伊の母である。

 初句「我が恋は」は、本巻の第千二十九首、第千三十首、第千三十六首と同じ初句である。
 二句「言はぬばかりぞ」は、口に出して言わないだけだ、の意で、ここで二句切れとなる。
 三句「難波なる」は、難波にある、の意で、難波は葦の名所として詠まれた。
 四句「葦のしの屋の」のしの屋は、葦や篠で屋根を葺いた粗末な小屋である。
 結句「したにこそ焚け」の「した」は、小屋の下の意と、心の内の意を掛ける。「こそ」は強意の係助詞で、「焚け」で結ぶ。本巻の第千六十首の元真歌の「消えぬは人のおもひ」を受けるように、心の下に燃える思いを詠み、本巻の第九百九十二首の人麿歌の「下焦がれ」とも通う。次歌の伊勢歌も「我が恋は」と同じ初句で起こす。

しのや:葦や篠で屋根を葺いた粗末な小屋
した:小屋の下の意と、心の内の意を掛ける
たく:火を燃やす
作者
小弁
出典
新古今和歌集
前の歌
誰ぞこの三輪の檜原も知らなくに 心のすきの我を尋ぬる
次の歌
我が恋は荒磯の海の風をいたみ しきりに寄する波の間もなし