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あるかひもなぎさに寄する白波の
間なく物思ふ我が身なりけり

歌の意味
生きているかいもない身で、渚に寄せる白波が絶え間ないように、絶え間なく物思いをする我が身であったよ。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 1066

詞書「題しらず」
 水辺や海辺の景に寄せて絶えない思いを詠む一連の四首目である。生きるかいもなく、渚に寄せる白波のように絶え間なく物思いをする我が身だと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「源景明」は平安時代中期の歌人である。

 初句「あるかひも」の「かひ」は、生きている「甲斐」と、渚の「貝」を掛ける。
 二句「なぎさに寄する」の「なぎさ」は、甲斐も「無き」意と、「渚」を掛ける。
 三句「白波の」は、渚に寄せる白波の、の意で、初句からここまでが「間なく」を導く序詞となる。
 四句「間なく物思ふ」は、絶え間なく物思いをする、の意である。本巻の第千六十四首の伊勢歌の「波の間もなし」と同じく、寄せる波の絶え間のなさに思いを重ねる。
 結句「我が身なりけり」は、我が身であったよ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆である。難波の小屋、荒磯、須磨の浦と続いた水辺の一連は、渚に寄せる白波で終わり、次歌からは山の景に寄せた恋が続く。

かひ:生きている甲斐の意と、渚の貝の意を掛ける
なぎさ:甲斐も無き意と、渚の意を掛ける
作者
源景明
出典
新古今和歌集
前の歌
須磨の浦に海人のこり積む藻塩木の からくもしたに燃えわたるかな
次の歌
あしひきの山下たぎつ岩波の 心砕けて人ぞ恋しき