蚊遣火のさ夜更けがたの下焦がれ
苦しや我が身人知れずのみ
- 歌の意味
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夜更けにくすぶる蚊遣火のように、心の奥で思い焦がれて苦しいことだ、我が身は。人に知られないままでばかり。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 1070
詞書は前の歌に続き「題しらず」
山や夏野に寄せて恋を詠む一連の四首目である。夜更けにくすぶる蚊遣火のように、人知れず心の奥で思い焦がれて苦しいと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「曽祢好忠」は平安時代中期の歌人である。丹後掾を務めたことから曽丹と呼ばれ、新奇な語や表現を用いた歌で知られる。家集に『曽丹集』がある。
初句「蚊遣火の」の蚊遣火は、蚊を追い払うために焚く火である。
二句「さ夜更けがたの」は、夜の更けるころの、の意で、「さ」は接頭語である。
三句「下焦がれ」は、蚊遣火が下のほうでくすぶるさまと、心の奥で思い焦がれるさまを重ねる。本巻の第九百九十二首の人麿歌の「置く蚊火の下焦がれつつ」と同じく、蚊遣火の下焦がれに恋を託している。ここで三句切れとなる。
四句「苦しや我が身」は、苦しいことだ、我が身は、の意で、倒置となっている。
結句「人知れずのみ」は、人に知られないままでばかり、の意である。夏野の草に続いて夏の夜の蚊遣火を詠み、夏の景に寄せた恋の一連をしめくくる。次歌も好忠の歌で、由良の門をゆく舟に寄せる。
かやりび:蚊を追い払うために焚く火
したこがる:表に出さず心の奥で思い焦がれる
- 作者
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曽祢好忠
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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小牡鹿伏す夏野の草の道をなみ 茂き恋路にまどふころかな
- 次の歌
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由良の門を渡る舟人梶を絶え 行方も知らぬ恋の道かも