由良の門を渡る舟人梶を絶え
行方も知らぬ恋の道かも
- 歌の意味
-
由良の瀬戸を渡る舟人が梶を失って行方もわからずさまようように、行く末もわからない恋の道であることよ。
- 鑑賞
-
巻第十一 恋歌一 1071
詞書は前の歌に続き「題しらず」
舟に寄せて行方の知れない恋を詠む一連の一首目である。由良の瀬戸を渡る舟人が梶を失ってさまようように、行く末のわからない恋の道だと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「曽祢好忠」は前歌から続く表記で、平安時代中期の歌人である。丹後掾を務めたことから曽丹と呼ばれ、新奇な語や表現を用いた歌で知られる。家集に『曽丹集』がある。
この歌は藤原定家の『小倉百人一首』に採られている。
初句「由良の門を」の「門」は海峡、瀬戸の意で、由良の門は潮の流れの速い瀬戸として詠まれた。
二句「渡る舟人」は、瀬戸を渡る舟の人、の意である。
三句「梶を絶え」は、梶を失って、の意で、梶は舟を漕ぐための道具である。初句からここまでが序詞となり、漂う舟に行方の知れない恋を重ねる。
四句「行方も知らぬ」は、どこへ行くかもわからない、の意である。
結句「恋の道かも」の「かも」は詠嘆で、恋の道であることよ、の意である。前歌までの夏の景から海の舟へと移り、次歌以下、潮路をゆく舟の歌が続く。本巻の第千七十三首の良経歌は「梶を絶え由良の湊に」と、この歌の語を用いて詠んでいる。
と:海峡、瀬戸
ふなびと:舟に乗る人、船頭
かぢ:舟を漕ぐための道具、櫂や櫓
- 作者
-
曽祢好忠
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
蚊遣火のさ夜更けがたの下焦がれ 苦しや我が身人知れずのみ
- 次の歌
-
追ひ風に八重の潮路を行く舟の ほのかにだにも逢ひ見てしがな