知るらめや木の葉降りしく谷水の
岩間に漏らす下の心を
- 歌の意味
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あの人は知っているだろうか、いや知るまい。木の葉が降り敷いた谷川の水が岩の間からひそかに漏れ出るように、わずかに漏らしている私の心の奥底を。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 1086
詞書「忍恋の心を」
人に知られてはならない心を「漏らす」ことをめぐって忍ぶ恋を詠む一連の一首目である。木の葉の下をひそかに漏れる谷水のように、わずかに漏らしている心の内を相手は知るまいと詠む。詞書によれば、「忍恋」(忍ぶ恋)を題として詠まれた。
作者の「前太政大臣」は、太政大臣を辞した人を指す呼称で、ここで誰を指すかについて定説を見ない。
初句「知るらめや」は、知っているだろうか、いや知るまい、の意で、現在推量の助動詞「らむ」の已然形「らめ」に反語の「や」が付く。初句切れで、相手に届かない思いをまず嘆き、倒置によって結句の「下の心を」へ続く。
二句「木の葉降りしく」は、木の葉が一面に降り積もる、の意である。本巻の第千百二十八首にも同じ句があり、そちらでは訪れのない通い路を覆う落ち葉として詠まれる。
三句「谷水の」は、谷を流れる水の、の意で、木の葉に覆われて見えない谷水が、人目につかない忍ぶ恋のたとえとなる。
四句「岩間に漏らす」は、岩の間から水が漏れ出る意と、心の内をわずかに漏らす意を重ねる。次歌の「もらすなよ」、第千八十九首の「もらさばや」と、「漏らす」の語が一連を貫いている。
結句「下の心を」の「下」は、木の葉の下の意と、表に出さない心の奥の意を兼ねる。本巻の第千八十一首の「下燃え」と同じく、表に出さない心を「下」の語で表している。
ふりしく:一面に降り積もる
いはま:岩と岩とのあいだ
- 作者
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前太政大臣
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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君恋ふとなるみの浦の浜久木 しほれてのみも年を経るかな
- 次の歌
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もらすなよ雲ゐる峰の初時雨 木の葉は下に色変はるとも