もらすなよ雲ゐる峰の初時雨
木の葉は下に色変はるとも
- 歌の意味
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漏らしてくれるなよ、雲のかかる峰に降る初時雨よ。たとえ木の葉が、下の方でひそかに色を変えようとも。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 1087
詞書「左大将に侍りける時、家に百首歌合し侍りけるに、忍恋の心を」
「漏らす」ことをめぐって忍ぶ恋を詠む一連の二首目である。峰の初時雨に向かって、木の葉が下で色を変えても漏らしてくれるなと呼びかけ、秘めた恋心が表に出ることを戒める。詞書によれば、作者が左大将であった頃に自邸で催した百首歌合で、「忍恋」を題に詠まれた。
作者の「摂政太政大臣」は藤原良経である。関白九条兼実の子で、摂政、太政大臣に至り、『新古今和歌集』の仮名序を書いた。
この百首歌合は、建久四年(1193)に良経が催した六百番歌合を指す。
初句「もらすなよ」は、漏らしてくれるな、の意で、禁止の「な」に呼びかけの「よ」が付く。初句切れで、前歌の「漏らす」を受け、漏らすことを強く禁じる語が冒頭に置かれている。
二句「雲ゐる峰の」は、雲がかかっている峰の、の意で、雲に閉ざされて人目の届かない峰の景である。
三句「初時雨」は、その冬初めて降る時雨で、木の葉を染めるものとされた。呼びかける相手がここで示される。
四句「木の葉は下に」は、木の葉が下のほうで、の意で、上からは見えないところで色づくことをいう。前歌も木の葉と「下」を詠んでおり、二首が同じ語で並べられている。
結句「色変はるとも」の「とも」は逆接の仮定で、色が変わろうとも、の意となる。木の葉がひそかに色づくことに、恋に染まってゆく心が重ねられ、倒置によって初句の禁止へ返っている。
ゐる:雲などがかかってとどまる
はつしぐれ:その冬初めて降る時雨
- 作者
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藤原良経
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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知るらめや木の葉降りしく谷水の 岩間に漏らす下の心を
- 次の歌
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かくとだに思ふ心をいはせ山 下行く水の草隠れつつ