もらさばや思ふ心をさてのみは
えぞやましろの井手のしがらみ
- 歌の意味
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漏らしたいものだ、思う心を。こうして堰き止めてばかりでは、とてもこらえていられない。山城の井手のしがらみも、あふれる水をとどめきれないように。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 1089
詞書は前の歌に続き「恋歌あまたよみ侍りけるに」
「漏らす」ことをめぐって忍ぶ恋を詠む一連の四首目である。思う心を漏らしたい、このまま堰き止めてばかりではいられないと、井手のしがらみにたとえて詠む。詞書は前歌から続き、恋の歌を多く詠んだうちの一首である。
作者は殷富門院大輔で、藤原信成の娘である。後白河天皇の皇女で殷富門院と呼ばれた亮子内親王に仕えた。
井手は山城国(京都府綴喜郡井手町)の歌枕で、玉川が流れ、山吹や蛙とともに詠まれた。
初句「もらさばや」は、漏らしたいものだ、の意で、「ばや」は自己の願望を表す。初句切れで、倒置によって二句の「思ふ心を」へ続く。本巻の第千八十七首の「もらすなよ」と、禁止と願望とで対をなしている。
二句「思ふ心を」は前歌の二句と同じ句である。前歌が思いを言えずに隠す心を詠んだのに対し、この歌は漏らしたいと願う心を詠み、同じ句を共有する二首が反転した構図で並べられている。
三句「さてのみは」は、そうしてばかりでは、の意で、思いを秘めたままの状態を指す。
四句「えぞやましろの」の「え」は、下に打消を伴って不可能を表す副詞で、「えぞやま(止ま)」、とてもこらえてはいられない、の意と、地名の「山城」が掛けられている。
結句「井手のしがらみ」は、井手の川に設けたしがらみで、あふれる水を堰き止めきれない柵に、抑えきれない思いがたとえられる。体言止めで結ばれ、堰を越えようとする思いの勢いが余韻として残る。
やましろ:とても止めていられないの意の「止ま」と、地名の山城を掛ける
しがらみ:川の流れをせき止めるために、杭を打ち並べて竹や柴を絡ませたもの
- 作者
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殷富門院大輔
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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かくとだに思ふ心をいはせ山 下行く水の草隠れつつ
- 次の歌
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恋しとも言はば心のゆくべきに 苦しや人目つつむ思ひは