恋しとも言はば心のゆくべきに
苦しや人目つつむ思ひは
- 歌の意味
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恋しいとでも口に出して言えば、心も晴れるだろうに。苦しいことだ、人目をはばかって包み隠している思いは。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 1090
詞書「忍恋の心を」
「漏らす」ことをめぐって忍ぶ恋を詠む一連の五首目である。恋しいと言えば心も晴れようが、人目をはばかって包み隠す思いは苦しいと詠む。詞書によれば、「忍恋」を題として詠まれた。
作者の「近衛院御歌」は近衛天皇である。鳥羽天皇の皇子で、母は美福門院藤原得子である。三歳で即位し、十七歳で崩じた。
初句「恋しとも」は、恋しいとでも、の意で、「も」が、せめてその一言だけでも、という気持ちを添える。
二句「言はば心の」の「言はば」は、未然形に「ば」が付いた仮定で、もし言ったならば、の意である。本巻の第千九十二首は「言はぬばかりは忍ぶとも」と言わずに忍ぶ側から詠んでおり、言えば晴れる心と言わずに忍ぶ心とが対をなす。
三句「ゆくべきに」の「ゆく」は、心が晴れて満ち足りる意で、「べき」は推量、「に」は逆接を表し、晴れるだろうに、の意となる。
四句「苦しや人目」の「苦しや」は、形容詞「苦し」に詠嘆の「や」が付いたもので、苦しいことだ、と嘆く。倒置によって、苦しいものが何であるかは結句で明かされる。「人目」は他人の見る目の意で、結句の「つつむ」へ続く。
結句「つつむ思ひは」は、包み隠す思いは、の意である。一連の結びとして、漏らしたいと願いながら人目をはばかって包み隠す苦しさへと至っている。
ゆく:心が晴れて満ち足りる
つつむ:人目をはばかって隠す
- 作者
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近衛天皇
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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もらさばや思ふ心をさてのみは えぞやましろの井手のしがらみ
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人知れぬ恋にわが身は沈めども みるめに浮くは涙なりけり