人知れず苦しきものはしのぶ山
下這ふ葛のうらみなりけり
- 歌の意味
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人に知られず苦しいものは、忍ぶ恋の、信夫山の木の下を這う葛の葉が風に裏を見せるような、恨みの思いであった。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 1093
詞書「忍恋の心を」
「しのぶ」の名をもつ歌枕に寄せて忍ぶ恋を詠む一連の一首目である。人知れず苦しいのは、信夫山の木の下を這う葛のように、表に出せない恨みの思いであると詠む。詞書によれば、「忍恋」を題として詠まれた。
作者は藤原清輔で、呼称の「朝臣」は五位以上の官人に付ける敬称である。左京大夫藤原顕輔の子で、六条藤家の歌学を受け継ぎ、歌学書『袋草紙』を著した。
信夫山は陸奥国(福島県福島市)の歌枕で、「忍ぶ」を掛けて忍ぶ恋の歌に詠まれることが多い。
初句「人知れず」は、人に知られずに、の意である。本巻の第千九十一首の初句「人知れぬ」と呼応し、人に知られぬ恋の苦しさが重ねて詠まれる。
二句「苦しきものは」は、苦しいものは、の意で、何が苦しいかを結句まで持ち越す構文である。本巻の第千九十六首も二句に同じ「苦しきものは」を置き、同じ構文で忍ぶ恋の苦しさを詠む。
三句「しのぶ山」の「しのぶ」には、恋を「忍ぶ」意と、地名の「信夫山」が掛けられている。ここから本巻の第千九十六首まで、「しのぶ」の名をもつ歌枕が続く。
四句「下這ふ葛の」は、木の下を這う葛の、の意で、地を這って人目につかない葛に、表に出ない思いがたとえられる。
結句「うらみなりけり」の「うらみ」には、葛の葉が風に翻って裏を見せる「裏見」と、相手を「恨み」に思う意が掛けられている。「葛」と「裏見」は縁語で、「けり」が気づきの詠嘆を添える。
しのぶ:恋を忍ぶ意と、地名の信夫を掛ける
くず:山野に生えるつる草、葉は風に翻って白い裏を見せる
はふ:地面を這う
うらみ:葛の葉の裏を見せる裏見の意と、恨みの意を掛ける
- 作者
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藤原清輔
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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もの思ふと言はぬばかりは忍ぶとも いかがはすべき袖のしづくを
- 次の歌
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消えねただしのぶの山の峰の雲 かかる心の跡もなきまで