消えねただしのぶの山の峰の雲
かかる心の跡もなきまで
- 歌の意味
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ただもう消えてしまえ、信夫山の峰にかかる雲よ。このように忍ぶ思いを抱く心の跡形さえ、なくなるまで。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 1094
詞書「和歌所歌合に、忍恋の心を」
「しのぶ」の名をもつ歌枕に寄せて忍ぶ恋を詠む一連の二首目である。信夫山の峰の雲に向かい、忍ぶ思いを抱くこの心の跡もなくなるまで消えてしまえと詠む。詞書によれば、和歌所で催された歌合で「忍恋」を題に詠まれた。
作者は飛鳥井雅経(藤原雅経)で、刑部卿藤原頼経の子である。『新古今和歌集』の撰者の一人で、蹴鞠にもすぐれ、飛鳥井家の祖となった。
和歌所は、後鳥羽院が建仁元年(1201)に『新古今和歌集』撰進のため院の御所に置いた機関である。
初句「消えねただ」は、ただもう消えてしまえ、の意で、完了の助動詞「ぬ」の命令形「ね」が強い願いを表す。初句切れである。本巻の第千八十一首の「おもひ消えなん」と同じく、「消え」の語で恋の終わりが詠まれる。
二句「しのぶの山の」の「しのぶ」には、恋を「忍ぶ」意と、地名の「信夫」が掛けられている。前歌の「しのぶ山」を受けて、同じ歌枕が続く。
三句「峰の雲」は呼びかけの対象で、消えよと命じられる雲である。
四句「かかる心の」の「かかる」には、雲が峰に「かかる」意と、「かかる(このような)」心の意が掛けられている。
結句「跡もなきまで」は、跡形もなくなるまで、の意である。本巻の第千八十一首の「跡なき雲」と同じく、雲と「跡なし」の取り合わせで秘めた恋が何も残さず消えることが詠まれ、巻頭歌と響き合っている。
しのぶ:恋を忍ぶ意と、地名の信夫を掛ける
かかる:雲が峰にかかる意と、このような、の意を掛ける
- 作者
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飛鳥井雅経
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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人知れず苦しきものはしのぶ山 下這ふ葛のうらみなりけり
- 次の歌
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限りあればしのぶの山の麓にも 落葉が上の露ぞ色づく