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うちはへてくるしきものは人目のみ
しのぶの浦の海人の栲縄

歌の意味
長く続いて苦しいものは、人目ばかりを忍ぶことで、信夫の浦の海人が栲縄を長く延ばして繰るように、果てしがない。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 1096

詞書は前の歌に続き「千五百番歌合に」
 「しのぶ」の名をもつ歌枕に寄せて忍ぶ恋を詠む一連の四首目である。長く続いて苦しいのは人目ばかりを忍ぶことで、信夫の浦の海人が栲縄を繰るようだと詠む。詞書は前歌から続き、千五百番歌合での詠である。
 作者は二条院讃岐で、源頼政の娘である。二条天皇に仕え、のち後鳥羽天皇の中宮宜秋門院任子にも仕えた。

 初句「うちはへて」は、長く引き延ばして、ずっと続けて、の意で、結句の栲縄を長く延ばすことと縁語になる。
 二句「くるしきものは」の「くるし」には、「苦し」の意と、栲縄を「繰る」意が掛けられている。本巻の第千九十三首も二句を「苦しきものは」とし、同じ構文で忍ぶ恋の苦しさを詠む。
 三句「人目のみ」は、人目ばかりを、の意で、四句の「しのぶ」に続いて、人目ばかりを忍ぶ、の意となる。
 四句「しのぶの浦の」の「しのぶ」には、人目を「忍ぶ」意と、地名の「信夫」が掛けられている。前歌までの信夫山から浦へと場所を移し、「しのぶ」の歌枕の一連を結ぶ。
 結句「海人の栲縄」は、海人が漁に用いる長い縄で、体言止めで結ばれる。「うちはへ」「くる」と縁語で結ばれ、長く繰り続ける縄に、果てしなく続く忍ぶ恋の苦しさがたとえられる。

うちはふ:長く延ばす、ずっと続ける
くるし:苦しの意と、栲縄を繰る意を掛ける
しのぶ:人目を忍ぶ意と、地名の信夫を掛ける
たくなは:楮などの繊維で作った縄、海人が漁に用いる
作者
二条院讃岐
出典
新古今和歌集
前の歌
限りあればしのぶの山の麓にも 落葉が上の露ぞ色づく
次の歌
忍ばじよ石間伝ひの谷川も 瀬を堰くにこそ水まさりけれ